インド日本人駐在員給与に関する税務上の留意点
Q:今回インドでの駐在員給与に関する最高裁判例が出た背景とは...?
インド現地法人が海外のグループ会社から駐在員を出向契約に基づき受け入れており、インド現地法人が海外グループ会社へマークアップをした上で対価を支払っていたケ ースに対して、給与に対する求償取引ではなく、 人材供給役務提供に該当すると判断されサ ービス税の支払が求められました。
Q:今回の最高裁判例のポイントとは...?
今回の判決要旨では、書類の中身より実際の運用が重要だと繰り返し記載されており、給与立替請求取引が求償取引に該当するのか、 人材供給役務提供と見做されるのかが ポイントとなります 。
Q:インドの日系企業現地法人駐在員への給与支払いが人材供給サービスとみなさ れる場合があるが、 一般的な駐在員への給与支払いがサービス税の対象にな るということはあるか...?
個別のケースにより異なるので必ずしも大丈夫と判断はできませんが、 2022 年最高裁判例のケースは一般的な日系企業にとっては少数なケースだといえます。 但し、今 後はこのような税務調査・訴訟が増えることが予想されますので、リスクを下げておくこと は必要となります。
Q:一方で納税者側が勝訴したケースは...?
2019年に日系企業 N社が勝訴したケースがあります。
これは、
・駐在員はインド法人の指示命令系統に従って勤務
・駐在員給与はインド法人の負担、所得税法に従い源泉徴収も行っていた
・親会社に対して手数料は支払っていない
このケースではインド法人と従業員は通常の契約と見做されサービス税の支払いは不要と判断されました。
Q:2022年最高裁判例との違いは...?
最高裁判例要旨では
・インド法人からの要請に応じて海外グループ会社は従業員を選定、出向をさせてい た
・インド法人の指示命令系統に従って従業員は業務にあたっていた
・給与の高い熟練した従業員の派遣を行っていた
・ インド法人から海外グループ会社へ給与等に15%のマークアップ適用後支払いを行っていた
・出向期間終了後グループ会社へ戻ると出向契約に記載があった
・出向者は出向期間終了後に海外の出向元に戻り次の出向先へ派遣されることもある
・出向元の給料体系は全て外貨で表示されている(このケースではUSドルで表示さ れていた)
が記載されておりますので、これらの背景が異なる点が違いとなります。
Q:仮に税務訴訟となった場合は解決までどのくらいの期間を要する...?
一概に期間を言えませんが最高裁判例が出るまで15年ほどかかるケースもあります。
2022年最高裁判例によりリスクの高くなる取引は...?
出向契約を締結し、駐在員の給与水準が高く、かつ給与等を本社側に請求する際に にマークアップをしている場合などの場合はリスクが高まります。 本事案ではサービス税が対象となっておりますが、GST も同様となっております。
税制講座第三弾もお楽しみに!!